近年、ビジネスシーンで「ウェルネス」という言葉がよく使われるようになりました。ウェルネスは、単に病気かどうかだけで健康を考えるのではなく、よりいきいきとした人生を目指す積極的な生き方を表す言葉として使用されており、「健康経営」とは異なる視点で「ウェルネス経営」を経営理念に取り入れる企業も増えています。
しかし
健康経営とどんな違いがあるの?
実際にウェルネス経営を掲げている企業はどんな取り組みをしているの?
ウェルネス経営を実現するには何をすればいいの?
そうお悩みのあなたに、この記事では、「ウェルネス」について、近年多くの企業で注目されている背景やメリット、ウェルネス経営を実現させる方法や、実際に取り組んでいる企業事例についてご紹介します。
ぜひこの記事を読んで、職場にリフレッシュスペースを設ける、健康促進プログラムを導入するなど、従業員が心も体も健康に働ける職場をつくってみてください!
ウェルネスとは?
ウェルネスとは、アメリカの公衆衛生学者ハルバート・L・ダン博士が1961年に提唱した「よりよく生きようとする姿勢」を指す言葉で、ダン博士はウェルネスを「輝くように生き生きとした状態」と定義し、健康を自己実現の手段と考えました。
病気の予防だけでなく、心と体の健康を大切にし、生活環境や人間関係を良くすることで「自分らしい生き方」を目指すことがポイントです。この考え方は、1977年に全米ウェルネス協会が発足したことで広まり、多くの人々が健康と充実感を追求するライフスタイルとして取り入れています。
ヘルス(健康)との違い
「健康」を意味する単語に「ヘルス」があります。健康とは、一般的に「病気がなく、身体が正常な状態」であることを指します。健康診断で示されるような身体のデータに基づいて病気の予防や治療が目的となるため、身体的な健康が中心です。ウェルネスと異なり、「あるべき状態を維持する」ためのアプローチが中心です。
ウェルビーイングとの違い
ウェルビーイングは「幸福感」「満足感」など、心身と生活環境が調和し、「自分が幸福で、心から満たされている」と感じられる状態を表します。単に健康だけでなく、やりがいや達成感、良好な人間関係なども含め、より広い視野で従業員が心から満足できる状態を目指す考え方です。
ウェルネスが「健康を基盤に自分らしい生き方を追求する姿勢」であるのに対し、ウェルビーイングは「健康と幸福が調和し、心から満たされることを目指す状態」を指します。
近年、企業において「ウェルネス経営」が注目されている!
現代では、従業員の健康管理だけでなく、心の充実や生きがいを含む「ウェルネス」が企業の成長においてとても重要視されています。社員が健康でいきいきと働けると、生産性や集中力がアップし、結果的に組織全体のパフォーマンスが向上するからです。
また、優秀な人材を採用して定着させるためには、単なる健康管理だけでなく、働きがいや自己成長をサポートする仕組みが欠かせません。ウェルネス経営を進めることで、従業員のワークライフバランスが整い、職場環境もより良くなります。こうした取り組みは、企業が長期的に成長するために必要であり、競争力を強化するための重要なポイントになります。
ウェルネス経営が注目されている背景
ウェルネス経営が注目される背景には、労働時間への考え方が大きく変わったことが理由としてあります。ブラック企業や過労死などが問題視されたことで、以前と比べ「単に長時間働く」のが良いことではなく「より効率的に働く」ことが良いと考えられるようになりました。
このような変化に伴い、国の政策も企業に影響を与えています。2015年に経済産業省が「健康経営銘柄」の選定を開始し、2017年には「健康経営優良法人」制度を導入するなど、政府は企業の健康管理への取り組みを強化しています。
この取り組みは、従業員の健康を確保することが企業の生産性向上やイメージアップに寄与するという考え方に基づいています。たとえば、健康経営を行う企業は、従業員のモチベーション向上や離職率の低下、また企業イメージの向上による人材確保に効果をもたらしているとされています。
また、残業時間の上限規制や柔軟な働き方の推進など、働き方改革が進むなか、企業は単に長時間働かせるのではなく、効率よく働ける環境の整備が求められるようになっています。
さらに、テクノロジーの発展でデータの活用が簡単になり、従業員の心身の健康管理にしっかり関わることができるようになりました。
(参考:経済産業省https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenko_meigara.htm)



単なる『健康管理』にとどまらず、『生きがい』や『働きがい』をサポートすることが、これからの企業の課題ですね!
健康経営との違い
健康経営は、従業員の健康管理を企業の経営戦略に組み込み、生産性の向上や業績の改善を目指す取り組みです。具体的には、健康診断や生活習慣改善プログラムの実施を通じて、従業員の心身の健康を守ります。対して、ウェルネス経営は、健康経営の一部として位置付けられ、さらに広い視点から従業員の幸福や生活の質を向上させることを目指します。
このように、健康経営とウェルネス経営は互いに関連しつつも異なるアプローチを持っており、健康経営優良法人として認定されるためには、ウェルネス経営の取り組みも同時に行う必要があります。
ウェルビーイング経営との違い
ウェルネスは主に健康の維持・増進を目的とし、体や心の健康管理に焦点を当てる考え方で、ウェルビーイングは、心身の健康に加え、「人生の満足感」も含むより広い概念で、「幸福感」や「生きがい」も重視します。
「ウェルネス経営」と「ウェルビーイング経営」は、少し異なる視点で社員の健康にアプローチしているものの、実際には同じような意味で使われています。
両者は、従業員の肉体的な健康だけでなく、心や社会的な充実も考慮し、働く意欲や人生の満足度を高めることを目指しています。
| 経営の種類 | 目的・定義 | 特徴 |
| 健康経営 | 従業員の健康管理を通じて、病気の予防や治療を目指し、従業員が元気に働ける環境を整えること | 病気予防、健康診断や健康指導など、身体の健康を主に管理するための施策が中心 |
| ウェルネス経営 | 健康を基盤に、従業員が自分らしく充実した生活を送るためのサポートを行い、働きがいや生きがいを感じられる状態を目指す | 心と身体の健康に加え、生活の質やワークライフバランスの向上も重視し、活力ある状態の維持をサポート |
| ウェルビーイング経営 | 心身の健康だけでなく、社会的・心理的な充実や幸福感も含む広い視点から、従業員の「幸福」を追求する | 心身の健康に加え、やりがいや人間関係、社会的な満足感など総合的な幸福感の向上を目的にした環境づくり |
健康経営の具体策
- 健康診断の実施
- メンタルヘルス研修
- 職場環境の改善
ウェルネス経営の具体策
- フレキシブルな働き方の推進
- コミュニティ活動の促進
- 健康プログラムの導入(ヨガやフィットネスクラスなど)
- ワークライフバランスの支援
ウェルビーイング経営の具体策
- キャリアアップや成長のサポート
- 職場での安心感を高める
- 社員同士のつながりやコミュニケーションを促進
ウェルネス経営の4つのメリット
ウェルネス経営は、企業が従業員の健康を重視し、心身の健康を維持・向上させるための取り組みです。このアプローチには、主に4つのメリットがあります。
1.体調悪化による休職・退職を防げる
従業員が病気やメンタルヘルスの問題で休職してしまうと、企業にとって大きな損失になっています。ストレス管理プログラムなど、ウェルネス経営を導入することで、労働環境が改善され、体調不良のリスクを下げることができます。
2.社員の生産性、業務効率が向上する
身体も心も健康な状態を維持することで、従業員は業務により集中しやすくなります。ウェルネス経営を通じて身体的・精神的な健康を保てると、業務効率が改善し、アウトプットの質も向上します。従業員が業務を効率的に遂行できる環境を提供することは、企業の成長にも直結します 。
3.企業のブランドイメージが向上する
「健康経営優良法人」などの認定を受けることで、企業のブランドイメージが向上します。ウェルネス経営に取り組む企業は、「従業員を大切にし、安心して働ける環境を提供している」という印象を与えます。これは、求職者にとって魅力的なポイントとなり、優秀な人材を採用しやすくなることにもつながります 。
4.医療費の軽減につながる
従業員が健康であれば、医療機関への訪問が減少し、企業が負担する医療費の削減になります。健康保険組合の赤字問題を解決するためにも、ウェルネス経営は重要なアプローチと考えられています。
ウェルネス経営の導入事例3選
1.野村不動産グループ
野村不動産グループは、「ウェルネス経営」を企業の重要な方針と位置付け、従業員の心身の健康を最優先しています。具体的には、国内にある15のグループ会社で、定期的にアンケート調査を実施し、社員のパフォーマンスや健康状態を把握しています。この調査では、以下のような指標が重視されています。
- アブセンティーズム(欠勤率)
- プレゼンティーズム(出社しているが生産性が低い状態)
- ワークエンゲージメント(仕事に対するやる気や関与度)
これらの調査結果は、毎年人材・ウェルネス・D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)委員会で確認され、企業全体の健康施策に生かされています。2021年度には2回、2022年度以降は年に1回のペースで実施されており、社員が「活き活きと働く」環境を実現するために取り組んでいます。


(参考:ウェルネス経営への取り組み|企業情報|野村不動産株式会社 | あしたを、つなぐ↗)
2.丸井グループ
丸井グループでは、グループ横断の公認プロジェクト「ウェルネス経営推進プロジェクト」のメンバーと、サポートする役割の管理職メンバーが主体となり、さまざまなウェルネス活動を企画・実行しています。
プロジェクトの概要と取り組み
丸井グループでは、「ウェルネス経営推進プロジェクト」と呼ばれる、従業員が主体的に健康活動に参加するプロジェクトが実施されています。これは社員が自ら手を挙げて応募できる公募制で、1年ごとに入れ替えが行われており、社員の主体性を促すとともに、全社的な健康促進に向けた活動を継続的に実施しています。
中期経営計画での位置付けとプロジェクトの進展
このプロジェクトは2016年に「健康経営推進プロジェクト」として開始され、2019年には「ウェルネス経営推進プロジェクト」に名称変更。現在は社員だけでなく社外にも影響を広げ、ウェルネスの理解を浸透させる段階に入っています。参加者には小論文選抜があり、自発的に参加する社員が年々増加し、プロジェクトの活動が拡大しています。
レジリエンスプログラム
役員や部長などのトップ層も「レジリエンスプログラム」を通じて積極的にウェルネス活動を支援しています。このプログラムは1年を通じ、組織内のトップ層が健康と活力を高める習慣を身につけることを目指し、360度評価を通じて実施後の効果もデータで確認しています。
(参考:https://www.0101maruigroup.co.jp/sustainability/pdf/w_report/2019/w_report2019_3.pdf)
3.楽天
楽天は、従業員の心身の健康を推進するために「ウェルネス部」を設立しています。この部門では、さまざまな健康施策が行われています。特に注目すべき取り組みは以下の通りです。
ウェルネスサーベイ
従業員の健康状態を把握するために、ウェルネスサーベイが実施されています。この調査に基づき、睡眠不足や運動不足といった課題に対して、オンラインセミナーを開催し、健康リテラシーの向上を目指しています。
ハドルストレッチ
チーム内での短い打ち合わせ中に行う5分間のストレッチを提供し、従業員が楽しみながら健康促進に取り組む機会を作っています。最初は興味がなさそうだった従業員も、体を動かすうちに笑顔が増え、徐々に賛同者が増えていったという実績があります。
(参考:生き生きと働く人が増える企業へ。ウェルネス経営の大切さについて担当者に聞いてみた↗)
ウェルネス経営を実現する方法
では、このようなウェルネス経営を自社でも実現させるにはどのような取り組みが必要なのでしょうか。ステップごとに、具体的な手順を解説します。
ステップ1: 健康状態を把握する
まずは従業員の健康状態やニーズを理解することから始めます。具体的な方法として、以下が考えられます。
例:アンケート調査の実施
従業員に対して定期的なアンケートを実施し、健康状態や働きやすさについての意見を集めます。具体的には、欠勤率や社員の仕事に対するやる気について指標を設定し、定量的なデータを収集します。
ステップ2: 健康施策を導入する
次に、収集したデータをもとに健康施策を導入します。この際のポイントは、従業員が参加しやすい施策を選ぶことです。
例①:健康推進活動の立ち上げ
丸井グループのように、自発的な参加を促すプロジェクトを立ち上げ、従業員が自ら手を挙げて参加できる環境を作ります。これにより、参加意欲を高められます。
例②:ウェルネスサーベイの実施
楽天が行っているように、ウェルネスサーベイを通じて従業員の健康状態を把握し、問題があればそれに対するセミナーを開催します。
ステップ3: 環境づくり
健康施策を効果的に実施するためには、職場環境の整備も欠かせません。
例①:フィジカルスペースの改善
快適な職場環境を整えるために、休憩スペースやリフレッシュルームを設けることも効果的です。例えば、軽食や飲料を用意し、社員がリフレッシュできる環境を提供します。
例②:ストレッチや運動の促進
ハドルストレッチのような短時間でできる運動を取り入れ、社員が気軽に参加できるプログラムを設けます。
ステップ4: 効果の測定と改善を繰り返す
最後に、導入した施策の効果を定期的に評価し、改善していくプロセスを構築します。
例①:評価指標の設定
施策が実施された後、どれだけ従業員の健康状態や生産性が改善されたかを測定します。例えば、欠勤率の変化や仕事に対する満足度の向上などが評価指標になります。
例②:フィードバックの収集
従業員からのフィードバックを基に、施策の改善点を見つけ出し、次回の施策に活かします。これにより、より効果的な健康経営が実現できます。
ウェルネス経営を実現したい企業におすすめの福利厚生サービス3選
1:リロクラブ「福利厚生倶楽部」
福利厚生倶楽部は、業界最多の350万種類もの豊富なメニューを低コストで提供している福利厚生サービスです。宿泊や旅行、育児、介護まで幅広いジャンルを網羅しており、AIレコメンド機能もあるため、利用者の興味や好みに合ったサービスを簡単に見つけられるのも魅力的ですね。
| 福利厚生の型 | カフェテリア型 |
| メリット・特徴 | 1.低コストで業界最多(約350万種類)のサービスを提供可能 2.AIレコメンド機能により、利用者の興味や嗜好に応じた最適なサービスを瞬時に見つけることが可能 3.独自の補助金による最安値の提供を可能にし、各種の事業を展開している |
| 費用 | 従業員一人あたり月額800円(税抜)から利用可能 |
詳しくは:福利厚生のことならリロクラブにお任せ|株式会社リロクラブ↗



総合型の福利厚生では月額800円で最安値!
2:イーウェル「WELBOX」


WELBOXは全国のサービスや数万か所の施設を会員価格で利用する事ができる福利厚生サービスです。内定者にも、現役社員と同様の福利厚生を提供することで就活者へのアピールに利用できるサービスがあったり、会員制リゾート「東急ハーヴェストクラブ」併設の「ホテルハーヴェスト」も特別価格で利用できます。
| 福利厚生の型 | カフェテリア型 |
| メリット・特徴 | 1.大企業から中小企業まで、全国約500万人の従業員が利用 2.全国のサービスや施設と提供しており、数十万点の商品、数万か所の施設が会員価格・特典対象。 |
| 費用 | 要お問い合わせ |
詳しくは:「量」と「質」にこだわった総合型福利厚生サービス|WELBOX



会員制リゾートも割引価格で使える!
3:リソルライフサポート「ライフサポート倶楽部」
ライフサポート倶楽部は、リソルライフサポート株式会社が提供する総合福利厚生代行サービスです。企業や団体が加入することで、従業員とその家族は、旅行、レジャー、健康、子育てなど、さまざまなサービスを優待価格で利用できます。会員専用サイト「メンバーズナビ」では、リソルポイントや会員クーポン、WEB会員証などの特典も提供されています。
| 福利厚生の型 | カフェテリア型 |
| メリット・特徴 | 1.宿泊施設、レジャー、育児・介護支援、自己啓発など、2,000種類以上のメニューを会員限定の割引価格で利用できる 2.会員本人だけでなく、配偶者や子供、さらに本人と配偶者の2親等以内の親族(兄弟姉妹、祖父母、孫)まで利用できる 3.Webサイトやスマートフォンから簡単にサービスの予約や利用ができる |
| 費用 | ライフサポート:基本料:350円+補助金:2〜500円 スマートプラン:入会金:45万円円+年会費2万円×5年=55万円 カフェテリア:基本料:350円+管理費150円+ポイント原資=500円 |



従業員が元気が一番!
まとめ
この記事では、「ウェルネス」について、近年多くの企業で注目されている背景やメリット、ウェルネス経営を実現させる方法や、実際に取り組んでいる企業事例についてご紹介しました。
ウェルネスとは、アメリカの公衆衛生学者ハルバート・L・ダン博士が1961年に提唱した「よりよく生きようとする姿勢」を指す言葉です。これは、ただ病気を防ぐだけでなく、心と体の健康を大切にし、生活環境や人間関係をより良くすることで「自分らしい生き方」を実現することに重きを置いています。類似している言葉に「健康」や「ウェルビーイング」などもありますが、健康は病気を防ぎ健康を維持することに焦点を当てた「あるべき状態の維持」を目的としており、ウェルビーイングは健康だけでなく、幸福感や満足感を含む「心から満たされる状態」を指しています。
以前と比べ、長時間労働ではなく「効率的に働く」ことが良しとされ、効率的に働くには従業員が健康でいきいきとしていることが必要であることから、近年、企業において「ウェルネス経営」が注目されています。
ウェルネス経営には、「体調悪化による休職・退職を防げる」「社員の生産性、業務効率が向上する」「企業のブランドイメージが向上する」「医療費の軽減につながる」など4つのメリットがあり、楽天や野村不動産グループなど、たくさんの大手企業がウェルネス経営に積極的に取り組んでいます。
ぜひこの記事を参考に、従業員がいきいきと健康的に働ける職場をつくってみてください!










